「ラヴァ フィールド」タダシ サトウ LAVA FIELD BY TADASHI SATO

タダシ サトウ(1923-2005年)
ラヴァ フィールド 1987年
キャンバスに油彩
縦47 ½インチ(121cm)×横95 ¾インチ(243cm)
タダシ サトウ(1923~2005年)のラヴァ フィールドは抽象表現主義をルーツに持つ現代的な風景画ですが、キュビスムの影響も見られます。たくさんのフラクタル図形が表すのが光なのか、空間なのか、時間なのか、それとも3つを同時に表すのかはっきりしませんが、これはサトウの他の作品にも見られるミステリーです。前景にはライトグレーの大きな角ばった物体が描かれ、遠くに行くにつれ小さく暗くなって、黒の中に消えていきます。見る者から離れて宇宙に飛び出しているように見えます。同時に黒い破片のような形状が沸き上がり、青い空にぎざぎざの地平線を成しています。まるでハワイ島の溶岩原のシルエットのようです。
この作品は主に三角形で構成されており、小さな三角形から浮き出る大きな3つの三角形が特に目につきます。線をたどっていくと、地平線にある大きな三角形はキャンバスの下端まで届いており、前景と後景の距離感を描いているように見える全体像と相反するものとなっています。右側の2つの大三角形の上部に付いた三角形は左を指しているように見え、左側の大三角形に付いた三角形は右を向いています。火山の煙がそういう風向きで流れていると解するか、抽象化された溶岩の影が空に映っていると解するか、いずれにしても重力と地面にどっしり座った感覚が強く感じられ、サトウの他の作品と並べてみると独特なものになっています。象徴としての三角形の重要性と、火山神ペレのエネルギーが作品全体を支配しています。
この作品は1987年に描かれ、それ以前のニューヨーク時代の特徴を再度表出したものと言えます。サトウと一緒に創作活動をしていたアーティストのラルストン クロフォード(Ralston Crawford)が、彼をモダニスムの画家ステュアート デイヴィス(Stuart Davis)に紹介しました。サトウはプレシジョニストの極端な抽象表現やデイヴィスのキュビスム的抽象表現を最終的には取り入れませんでしたが、空間内に平面的な図形を描く手法への傾倒は彼の中に残ったのです。